散らかったスリッパをきちんと揃え直した上で空きスペースを作り、きれいに自分のスリッパを置いたのは、キャッチャーのポジションを守る選手だった
南海でのプレーイング・マネージャー時代、キャンプでの全体ミーティングで、選手のスリッパの脱ぎ方をポジション別に観察したときのこと。「いかにもキャッチャーらしいな」と野村は思った。ピッチャーをリードしながら配球を考えなくてはいけないキャッチャーには、几帳面さと気配り、心配りが求められるのだ。対照的なのはピッチャー。多くのピッチャーは、乱雑に置かれたスリッパの上にまたスリッパを脱いで部屋に入っていった。ピッチャーにはスリッパなど気にしない図太さと強い度胸が求められる。